はじめに
自分の評価基準を明瞭にすると決定力を鍛えられるよ、という話と、決定に使われる評価基準には自覚のないものがあって厄介ですよ、という話です。目次は以下のとおりです。
- 決定における評価基準とその優先順位
- 評価基準の優先順位を決める利点
- 暗黙の評価基準
- 暗黙の評価基準による問題
- 暗黙の評価基準にどう対応するか
この記事の内容は我流なので、「こういうもっと良い話があるよ」というものがありましたら紹介いただけると幸いです。
過去に書いた以下の記事の続きのようなものです。
決定における評価基準とその優先順位
タスクの優先順位を決めるとき、「なぜそのタスクの優先順位は高い/低いのか」を判断する評価基準が存在します。例えば、業務タスクであれば「期日までにタスクを完了できる」や「自分の影響で他者を遅らせない」などが評価基準に当たります。
タスクが複数あるときは実施する順番である優先順位を決めることがあります。評価基準も複数ある場合がほとんどなので、評価基準についても優先順位を決めることができます。*1
持論ですが「すべての情報が揃っていれば、物事の決定は一意に決まる」というものがあります。あらゆる条件や候補が出揃っていて、決定のための評価基準やその優先順位が定まっていれば、誰でも同じ結論に到達する、という考えです。
もちろん、現実ですべての情報が出揃うことは有り得ないことではあります。ですが、業務で私が何かを決定するときは、可能な限り決めるための情報やその評価基準を用意して、他人にも再現できる状況を作ろうと努めます。*2
そして「すべての情報が揃っていれば、物事の決定は一意に決まる」という考えですが、別の考え方にも派生します。「決定が一意に定まらないのであれば、何かの情報が抜けているかもしれない」と探索的な思考に繋がります。条件や候補が抜けているかもしれないし、評価基準が出揃っていないかもしれない。もしくは、評価基準の優先順位がズレているかもしれません。
評価基準の優先順位を決める利点
優先順位の定まった評価基準の集まりは、ほぼ意思決定アルゴリズムといえるものだと考えています。この評価基準の集まりを明瞭にすると、利点として、以下が挙げられます。
- 他人に納得してもらえる
- 意思決定を改善できる
他人に納得してもらえる
ある決定に対して、どういう条件や候補があって、どんな評価基準をどのような優先順位で判断しているかが明瞭であれば、他人に納得してもらいやすくなります。もちろん、納得してもらえるのは「この方法でこの決定を下しました」という内容に筋が通っていることであって、「条件や候補の良し悪し」「評価基準の良し悪し」「評価基準の優先順位の良し悪し」に納得してもらえるかは別問題になります。
しかし、どのように意思決定したかを相手に理解してもらうことで、指摘箇所を具体的にすることができます。
「この決定は受け入れられない」から「この候補が比較に含まれていない」「こういった条件が考慮されていない」「我々はそれよりもこういったことを優先したい」のように認識がズレている個所を具体的にできます。
意思決定を再現できる
意思決定で期待した結果が得られなかった場合、どこに問題があったかを振り返り、改善する必要があります。意思決定アルゴリズムが明瞭であれば、改良点も明瞭になります。結果が出た後であれば、「評価のどこで問題がある決定に導かれたのか」「同じ入力があったときにより良い結果を得るためにどういった評価基準の変更を行えばよいか」が分かります。例えば「発注より別作業を優先したら、納品が遅れてスケジュールに影響が出た」のであれば、「スケジュールに影響がでないようにする」ために「他者に影響する作業」を優先的に対応することで同様の状況をより上手にこなせることが期待できます。つまり、評価基準の集まりを明瞭にすることは、意思決定を鍛えることに繋がると考えられます。
暗黙の評価基準
評価基準の認識が揃っているはずなのに、決定がズレる場合があります。「試験前日の学生」を例にして見てみます。数字が低いほど、優先順位が高いものとしています。
理想的な試験前日の学生のタスク想定
例えば、試験前日の学生は以下のような評価基準の優先順位を持っているものとします。勤勉そうですね。
- 良い成績を納めたい
- 万全の体調を確保したい
また、評価基準の優先順位に従うと、実施すべきタスクは以下のようになります。とても上手くいきそうに思いますね。
- 勉強する
- 寝る
- 部屋を掃除する
- 漫画を読む
実際に起こりがちな試験前日の学生のタスク想定
ですが、実際に実施しがちなタスクは以下のようになります。きっと徹夜に近いのに勉強は全く手つかずだったでしょう。
- 部屋を掃除する
- 漫画を読む
- 寝る
- 勉強する
自覚していない評価基準
評価基準の優先順位に従っているはずなのに、そうとは見えない決定をしている場合、自覚していない「暗黙の評価基準」が存在している場合があります。例えば、この学生の例では実際には以下のような評価基準や評価順位だったかもしれません。
- (難しいことを考えたくない)
- 良い成績を納めたい
- 万全の体調を確保したい
暗黙の評価基準による問題
公にしている評価基準が「理想」に近ければ、暗黙の評価基準は「現実」に近いかもしれません。暗黙の評価基準で実際の決定が左右されている場合、「理想」と「現実」のギャップが起こりえているかもしれません。暗黙の評価基準があることで起こり得る問題として、以下が挙げられます。
- 暗黙の評価基準を隠すことに労力を使う
- うまく行かなかったときに改善が難しくなる
- 公になっている評価基準を満たしても満足しない
暗黙の評価基準を隠すことに労力を使う
例の学生の場合「試験前日はしっかり勉強するんだ」といっていたかもしれません。暗黙の評価基準は「公にしたくない評価基準」と言い換えらえる場合があります。暗黙の評価基準が公にならないように自分の行動に神経を割くため、公にしている評価基準に対しても注力しにくくなります。そのため、公にしている評価基準の達成も難しくなります。
うまく行かなかったときに改善が難しくなる
例の学生の場合「集中して勉強するために部屋を綺麗にする必要があったんだよ!」というかもしれません。暗黙の評価基準があると、暗黙の評価基準を避けるような問題分析を行いやすくなるため、自身の決定の何に問題があったのかの客観的評価が難しくなります。そのため、改善策が最適解から外れる場合があります。
公になっている評価基準を満たしても満足しない
暗黙の評価基準の優先順位が高い場合、「公にしている評価基準と本当に達成したい評価基準が別にある」状態だといえます。それにより、公にしている評価基準が仮に達成していたとしても、本当に達成したい評価基準が達成されていないために満たされない、という事態が起こりえます。
例の学生の場合「試験で良い結果が得られたけど、次の試験ではまた勉強やらないとなぁ、、、」となるかもしれません。
暗黙の評価基準にどう対応するか
暗黙の評価基準への対応方法は凄く難しい問題です。自覚がないことに加え、本人が公になることを避けたい問題であるから、そもそも「暗黙の評価基準が存在すること」自体、本人が否定したいことが多いです。
そのうえで「暗黙の評価基準を見つける方法」として挙げるのであれば、「下された決定から評価基準を予想すること」が挙げられます。本記事の序盤で述べた「決定が一意に定まらないのであれば、何かの情報が抜けているかもしれない」を元に、手持ちの情報で決定が再現できないのであれば、出揃っていない情報に目を向けるようにすることが、暗黙の評価基準を特定する方法の一つとして挙げられます。
また、「暗黙の評価基準」は可能な限り、自覚することをお勧めします。例えば「面倒だから」「大変だから」といった負の感情に基づくものでも、それに基づいて決定を下したことを受け入れると良いと考えます。それで良い結果が出なくても「自分はそういった感情で判断したのだから、仕方がない」と考えます。その結果を受け入れられるならいいでしょうし、その結果を受け入れられないのなら評価基準を改善していく必要があります。少なくとも、自身の評価基準と得られた結果のギャップは埋まるため、自分の決定に対する結果の納得感は得やすくなると考えます。
おわりに
「頑張っているのに成長しない」というのは色々なところから聞こえてきますが、自分自身がどのような考えに基づいて意思決定しているのかを客観的に知ることは、成長に必要な要素だと考えています。成長に繋がる決定を実現するために、私が意識していることをまとめてみました。